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2010.08.24

fooling around waters

poolline.JPG

水に浸るのが、とにかく好きだ。

朝晩欠かさずの入浴。
矢部さんに拵えてもらったコトバノイエの風呂は最高に気持ちいい。
あっちもこっちも扉が開く。
ステンレスの器。
針葉樹の床。

英語でレッドシダーと呼ばれる種は4種あるが、分類学的には関係は薄い。
また、シダーとは厳密にはヒマラヤスギ属のことだが、レッドシダーは
いずれもヒマラヤスギ属ではない。(Red Cedar quated from Wikipedia)

海水浴。
つま先で跳ねるように砂浜を走り、ザブンと飛び込むしょっぱい水。
あがってからも、身体が波に揺られているようだというほどにはもう浸れないけれど。
少し遠くまでは泳いでゆける。
波を越えて

海に沈む夕陽。

鳥取駅前の鄙びた銭湯の湯船には、こんこんとお湯が溢れていて、ちょっと熱い。
銭湯のお湯は、どこでもいつもちょっと熱い。

駐車場はただ、入るのは200円のホームプール。
少し泳いだあとタオルを敷いて眼をつぶれば、子供たちの歓声が遠くに響く。
揺れる水面。

初プール!! プール→カキ氷→本屋→本屋→白島食堂。
極楽でございます、紅海に行かずとも。
tweet / 8:50 PM Jul 20th Twitter for iPhoneから。

雑草に埋もれてた水のないプール。
田圃のなかにある隠れ家のようなプールは、1年ぶりに行ったら閉鎖されていた。
ちょっとした楽園みたいな外プールだったんだけど。
人のいない廃虚に佇む。

またある日訪れた、信じられないほどの人のひしめく都会のプール。
ローラーコースターの残骸を眺めながら、葬送の行進のようにただ歩くだけの水たまり。
しかも気のきいたことに、大きな風呂までついてやがる。
spa world という名前が冗談としか思えない。
ビルディング。
新世界。

ゴルフコースを眺めながら寛ぐ山の中の小さなプール。

この高原のプールは、とにかく気持ちがいい。
それほど広いプールではないのだが、半外のデッキスペースがあり、澄みきった空の下で、
ゴルフ場の芝生や遠くに建ちならぶ山小屋風のコテージ、そして遙かに霞む山々なんかを
眺めながら、泳いだり、デッキチェアに寝ころんだり、ジャグジーに入ったりするのは、
岡林信康じゃないけれど、「申し訳ないが気分がいい」。
blog / 2009年5月 8日 12:49。

20mの潜水。

故郷を訪ねてくれた知己を連れ行く露天風呂。
リゾートの快楽。
森の夕暮れ。

そして、川遊び。
故郷の渓流の、冴えた水に身を浸す。
その冷たさと懐かしさ。
伝える。

帰路、ナビゲーションに導かれるままに辿り着いた京都のプール。
50mの競技プールで泳ぐ気持ち良さ。
体力がなくなったことはすでに幻滅ではなく。
as it is.
jacuzzi のぬくもり。

山のプール→露天風呂→川遊び→50m競技プール、とにかく水に浸り続けた3日間。
そんなかんたんに仕事モードには戻れない、身も心も。
tweet / 8:15 PM Aug 18th webから。

そうして最後はやはり家に戻る。
うたた寝のあと、目覚ましで浴びるシャワー。
年にたった3回くらいしか使わない外のシャワーだけど、その開放感は、唯一無二。
空の下で素裸になれるのはここだけだ。

外壁からとびでたシャワーの栓を捻り、冷たい水を冠ったら、本を買いにいく。

もうすぐ夏が終わる。

*

真夏の本買。
心なしか、本も少し草臥れている。

際立ったものはそれほどないが、珍しいものがいくつかある。

□ 日本について   吉田健一   講談社  19570825 第1刷  ¥2,000
□ 時間   吉田健一   新潮社  19760415 初版  ¥1,000

去年読んだ「私の食物誌」からだから、実際にはそれほど古くから読み込んでいるわけではないが、
ずっとなんとなく気にかかる書き手のひとり。

本職の評論はなかなか読めないが、饒舌体とでもいえそうなエッセイの独特の文体と比喩は、滋味深い。

「日本について」は、松田正平の手になるブックデザインがまず素晴らしい。

その作風と同じような軽妙で素朴な描き文字に、同じ手描きの飾り窓。
函と同じデザインが、エンボスだけで表現されている本そのものもお洒落だ。

あとがきの一節を引用する、少し長くなる(短い引用を許さない文体なんだ)。

自分の国を直接に取り上げて書くといふのは、見方によっては無駄なことであって、我々の国は
我々の行動にあり、それに就いて書くのは外国人に任して置いていいのだといえる。併し宣伝でも、
感傷でもなくて自分の国のことを書く場合もあるのはあるので、我々日本人は明治維新から今日
まで日本に就いて絶えず考えることを強いられて来た。維新以後の日本が、我々の手で、積極的に
作られた面があるからである。そして考えたことは、書く材料にもなる。。

「時間」のほうは、もう少し抽象的

その最後の一文。

併し世界を見廻してそこに間違いなくあると認められるものはそこにあり、それがあったのでは
ないのはその感覚を生じさせるものがないからであって我々が物を見るときの眼を世界に向ければ
そうなる。そこにあるものはあって我々に語り掛けるがかういうことが曾てあったと語るものは
なくてそこにも流れる時間といふのは常に現在である。

これが吉田健一。 

□ FLUX : Asymptote  H.Rashid +L.A.Couture  PHAIDON 2002 first  ¥3,000

ラディカル・カップルズ。

妹島和世と西沢立衛をはじめとして、男女ユニットで設計活動を行うの建築家が増えているけれど、
この「Asymptote(語意は『漸近線』だが、べクタ・グラフィックスのためのコンピュータ言語の名称
でもある)」もそういうユニットのひとつで、この「FLUX」は、ヴァーチャルなものを含んだ彼らの作品集。

そのほとんどが、「MAYA」と呼ばれる、ディズニーのアニメなどにも使われているソフトウェアで制作
されているようで、この本にあるオーガニックなデジタル・デザインは、いかにもそれらしいものだ。

ニューヨーク株式取引所のヴァーチャル・リアリティ・トレーディングフロア、Knoll社の家具システム、
ヴェニス・ビエンナーレのパビリオン、Dodgerのスタジアム、ドイツのMercedes-BenzMuseumなど。

好みは別として、こういうものがどんどん実作になっているそのダイナミズムは、素晴らしい。
たとえば東京証券取引所に、実績のない若者のアヴァンギャルドなインテリア案が採用されるなんて、
たとえどれだけ景気が良くてもちょっと考えられないからね。

20世紀ではない、少なくとも。

他にもこんな本たちが、この夏コトバノイエの本棚に収まった。 

□ 犬狼都市 キュノポリス    澁澤龍彦    桃源社  19620410 初版   ¥4,000

□ おぼえていないときもある    W.S.バロウズ    ペヨトル工房   19970910 第2刷   ¥1,800

□ 詩人 金子光晴自伝    金子光晴    平凡社   19731205 第2版第1刷   ¥1,000

□ 絵本 桜の森の満開の下    坂口安吾/福田庄助    審美社  1 9900920 初版   ¥3,000

□ Philip Johnson/John Burgee Architecture 1979-1985     RIZZOLI INT’L  1985   ¥2,100

□ 詩めくり    谷川俊太郎    マドラ出版   19841210 第1刷   ¥600

□ 古都    川端康成    新潮社   19681030 15刷   ¥700

□ 詩人たち    粟津則雄    思潮社   19690801 初版   ¥2,000

□ うらなり    小林信彦    文藝春秋    20060815 第3刷   ¥300

□ ノンセンス大全    高橋康也    晶文社   19780630 4刷   ¥2,400

□ 能 神と乞食の芸術    戸井田道三    せりか書房   19850325 第5刷   ¥1,200

□ 図説 日本民俗学全集 3 ことば・ことわざ編    藤沢衛彦    あかね書房  19600531初版  ¥1,500

 

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