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2010.08.13

think naturally

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twitterの海を遊泳していると、なかなか言霊が降りてきてくれない。

暑い夏。

家と本との関係に想いを馳せる。

コトバノイエは、本のために造られた家だから、あたりまえのように本が並び、あたりまえの
ように古書店の看板をあげているが、普通の家を本の家にするとしたら、きっと何かが必要だ。

夏の旅の途中で立ち寄った、静謐な寺院のような山の中の窯場。
そこで造り、そこで売り、そこで暮らす。
迷いのないひとつの自然な営み。

鳥取の鄙びたビルの2階に並ぶ小さなレコード屋と、小さな雑貨屋と。小さな家具屋。
若さのもつ確信的なあやうさ、そうであるがゆえの小気味よさ。

海の家、砂浜にはえる植物のような。

近藤サンのところの「 one coin / one note 」、矢部サンのところの「水土書店」。
どちらもすごく短い間だったけれど、ショップをやらせてもらって良かったなあと思うのは、
ショップに立っている人の気持ちがわかったことだった。

店に入ったら「こんにちは」と声をかける、手ぶらで店を離れない。
あたりまえの事かもしれないが、見知らぬ人のそういう振る舞いが、ことのほか嬉しい。

そういう振る舞いを起こさせるような something.

アフォーダンスの集積。

手垢のついた「プロ」たちには、決してできないこと、考えもつかないこと。

そして、M氏の本屋。

曰く、本を一人ぼっちにさせないために、
曰く、「欲望」と「市場」のあいだに

本は必ず3冊買うこと。まず本を1冊選び、次に1冊選ぶ。問題は2冊目・3冊目に向かうときに、
実はものすごいジャンプがあるんですね。その2冊か3冊を買うのをみんな怖がっているんです。
本の値段なんて大したことないんですから。

これはホントに言えてるなあ。
来てくれる人たちがにそういう気になるような、コンテンツじゃないとダメなんだ。

セレクションは FLAT に、ディスプレイには、はっきりとした濃淡をつけるべきなんだろう。

コアをどこに置くか、それが現場のポイント。

それにしても、と。

「集う、繋がる、広がる」という、あのキーワード。
 
―  think  naturally

*

酷暑の中の本買記。

旅先でも古本屋に行くのはルーティンだけれど、鳥取市にはいくら調べても古本屋らしきものがなく。
それでもなんとか見つけだし、新刊まじりで少しだけ買えた。

< books I bought in tottori >

□ 日々の100   松浦弥太郎   青山出版社   20090410 第2刷   ¥1,500
□ 第一阿房列車   内田百閒   新潮文庫   20071015 6刷   ¥360
□ 百鬼園随筆   内田百閒   新潮文庫   20040120 9刷   ¥400
□ 松岡正剛の書棚   松岡正剛   中央公論新社   20100701 初版   ¥1,200
□ ブローチ   内田也哉子/渡邊良重   リトルモア   20050303 第2刷  ¥1,400

*

< buying books as usual >

□ ai ジョン・レノンが見た日本   ジョン・レノン   小学館   19901201 初版第1刷  ¥1,800

ジョン・レノンの日本語練習帳。

MYSELF – jibun から始まって、POET – shijin に続き、やがて LOVE – ai で終わるその流れは、
いかにもジョンらしいし、自筆のスケッチは、彼がそれぞれの単語やセンテンスで思い描くイメージが
そのまま表現されていて、興味深い。

外国語を、愛する人と共に、こんな風にセルフ・スタディできればきっとすごく楽しいんだろうな。

ジョンがいなくなってもう30年だ。
このあいだも、車のラジオから彼の imagine が聴こえてきて泣きそうになった。

*

定点観測している作家たちがいる。
草間彌生は新顔だが、小林秀雄も金子光晴も、本棚で出会えば必ずチェックする人なのだ。

□ ファン・ゴッホ書簡全集 1   小林秀雄監修   みすず書房   19770909 第5刷   ¥3000

□ ファン・ゴッホ書簡全集2    小林秀雄監修         みすず書房         19771205 第4刷  ¥7,000

□ 論集 古典と美         小林秀雄   求龍堂   19650615 2版   ¥2000

ゴッホの書簡全集は全6巻の端本、瀧口修造の装幀による大型本で、New York Graphic Society
刊行の「The Complete Letters of Vincent Van Gogh」を原本とする全訳。

読破するにはそうとうの体力が要りそうな気配の本だけれど、「これほど綿密な手紙を書く人間は、
ひどく孤独な人間にちがいないのだ」という、月報での粟津則雄の言葉が、この書簡集の本質を
言いあてているように思える。

「古典と美」は、まさに小林秀雄の本領。
選ばれた作品も、本の体裁も、まったく文句のない美しい一冊だ。

小林氏は眼を通して発見し感動し、造型に内在する言葉と対話しながら、それをさらに言語表現の
世界を移さうとして刻苦しているが、そのすがたがそのまま詩となっている。( by 亀井勝一郎 )

「内在する言葉」とは、すなわち文学のことだ。

 

□ ねむれ巴里   金子光晴   中央公論社   19731030初版  ¥700

□ 風流尸解記   金子光晴   青蛾書房    19720510第4刷  ¥900

小林秀雄が教祖(by 坂口安吾)だとしたら、金子光晴もまた教祖のひとりだろう。

圧倒的な自由感。

「ねむれ巴里」は「どくろ杯」「西ひがし」とならぶ放浪三部作、「風流尸解記(フウリュウシカイキ)」は、
生粋の詩人としては唯一無二の長編小説だが、散文と詩が境界もなく解け合うその様は、小説という
よりは、やはり「自由詩」と呼ぶべきもののような気がする。

日本語の使い手としては one and only の人だ。

 

□ 聖マルクス教会炎上   草間彌生   パルコ出版   19850428 初版      ¥2700
□ 天と地の間       草間彌生   而立書房   19880420 第1刷   ¥700

ちっとも読まないのに、なぜか直島の海辺のあの黄色いカボチャが頭から離れなくて、
見かけるたびに手が伸びる。

彼女の小説は、すべてがポルノグラフィだけれど、どうも小説としてではなく、文章が詰まった
ひとつの作品として自分の眼が認知しているようだ。

それこそが、彼女の「おもうつぼ」なのかもしれないが。

*

< odds and ends >

□ 画家の沈黙の部分   滝口修造   みすず書房   19800110 第4刷  ¥2000

□ フリッカー、あるいは映画の魔   セオドア・ロザック   文藝春秋   19981130 第2刷  ¥1600

□ 日本の民家   今和次郎   相模書房   19711130 増訂第4刷  ¥3600

□ 定本 種田山頭火句集   種田山頭火   彌生書房   19830420 9版  ¥1,200

□ トリックスター   ラディン他   晶文社   19870120 13刷  ¥900

□ 樹の文化誌   足田輝一   朝日新聞社   19900110 第5版  ¥600

□ 蒐集物語 私家本柳宗悦集第4巻   柳宗悦   春秋社   19740330 初版  ¥2400

□ ジャンキー   ウィリアム・バロウズ   思潮社   19841001 新装版第3刷  ¥900

□ 自然の言葉   ジャン=マリー・ベルト   紀伊國屋書店   19960628 初版  ¥400

□ 未来圏からの風   池澤夏樹   パルコ出版   19990609 第4刷  ¥1600

□ DECORATIVE ART 50’s   Charlotte & Peter Fiell   TASCEN   2008  ¥1360

□ 永遠の緑色   片岡義男   岩波書店   19900606 第1刷  ¥600

□ 釣師・釣場   井伏鱒二   新潮社   19600229 初版  ¥1200

□ 最後の瞬間のすごく大きな変化   グレイス・ベイリー   文藝春秋   19990525 第1刷  ¥1,200

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再入荷、あるいはダブり

□ 裸のランチ   ウィリアム・バロウズ   河出書房新社   19710615 初版  ¥1500
□ 普通のデザイン   内田繁   工作社   20070630 初版  ¥1100
□ アウトサイダー   コリン・ウィルソン   紀伊國屋書店   19810315 第43刷  ¥1500
□ 麻薬書簡   W.バロウズ/A.ギンズバーグ   思潮社   19770601 第4刷  ¥2000  
□ かくれ里   白洲正子   新潮社   197812101 1刷  ¥2,000
□ デザインのデザイン   原研哉   岩波書店   20031021 第1刷  ¥1,300
□ カンバセイション・ピース   保坂和志   新潮社   20030730 初版  ¥500

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