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2010.11.20

one hundred books for cafe moka

moka.JPG

百花の百本。

木村家本舗の余韻も冷めぬままに、というかその流れで、ブックセレクションを頼まれた。

依頼の主は、茨木の駅前で築100年の古民家をリノベーションして、カフェ+ギャラリー
+設計スタジオ =  GRAN FABIRIQUE(グランファブリック)を主宰する河上さん。

そのカフェ、「cafe 百花(モカ)」にライブラリイを設置したいということだが、じつは河上さん
とは、一年近く前から何かいっしょにやりましょうと話をしていて、それがこのcafe百花 の
リニューアルを機に、叶うことになったわけだ。

近藤さんの「one coin / one note」、矢部さんの「水土書店」、木村さんの「木村家本舗」。
今年は思わぬ幸運に恵まれて、本を介してのとても楽しいセッションをすることができたし、
10月のスケジュールがけっこうハードだったので、年内はじっくりと本を集めてみようなんて
ぼやっと考えていたんだけれど、これは受けてたつしかない。

恥ずかしい話だが、齢50を過ぎると、人は生き急ぐのだ。

 books+コトバノイエ というブックショップを始めたころに、こんなことを夢想した。
今のように、本のコーディネーションという言葉がポピュラーになる前のこと。

本のセレクションというサービスができないかと思う。
Amazonのセレクション・ソフトは情報の集積がベースだけれど、このソフトをもう少し
繊細なものにして、人と人とのインターフェイスの中からでてくる直感的なセレクション
を提供する、司書的なものでもキュレーター的なものでも、まして書店でもなく、いわば
「本の Stylist」とでもいったようなものだ。

そこに書かれている内容だけじゃなく、ブックデザインや組み合わせも含めたセレクションで、
そこに在ること自体が、そのスペースやそのショップやその人の表現となるような本棚を、
デザインすること。

たとえば素敵なライブラリーのあるリゾートホテル、週刊誌や新聞だけじゃない歯医者さん、
美しい装丁の写真集が並んでいるブティック、エバーグリーンな随筆の置いてある輸入車の
ディーラー、付加価値や差別化がマーケティングのキーワードとなっている時代に、本という
ものが(単にディスプレイとしてだけじゃなく)、そのひとつのマティリアルになることが
あったっていいんじゃないだろうか。

コトバノイエを始めたばかりだったその頃には、そんなことがすんなりと実現できるとは
思っていなかったけれど、機会に恵まれてそんな妄想が少しずつ現実になっていく様を、
リアルに体感できたのは、僥倖としか表現のしようがない。

で、以下がその百本である。

リニューアルされた百花のスペース、そしてそこで珈琲を飲みながら寛ぐお客様とこの本たち
がどのように交流していくのかは、想像を巡らせるしかないが、ライブラリイでありディスプレイ
であり、販売していく商品という、多重の意味を担う存在になるはずだし、これまでのように
期間を限ったものではなく、常設のプロジェクトだから、できるだけ奇をてらわないナチュラルな
構成(といってもやはりクセがあるのは否めませんが)で、というのが正直な想い。

河上さんからは、殺し文句のように、「自由にやってください」といわれていたが、テーマの
決まっていないセレクションほど難しいものはなく、例によってさんざん悩み(愉しみ)ながら
のピックアップだったが、けっきょくこんなリストでスタートすることにした。

このリストが、どのように移り変わっていくか、それこそがこのプロジェクトの真価なんだろうな。

one hundred books for cafe moka     2010/11/18 ( ordered by stock no. )

□ モンタナ急行の乗客    新井敏生   新潮社  19941030/1刷

□ 怪しい来客簿    色川武大   話の特集  19770420/初版

□ ぼくのニューヨーク地図ができるまで    植草甚一   晶文社  19770630/初版

□ チャンピオンたちの朝食    カート・ヴォネガットJr.   早川書房  19840815/3

□ バウハウスからマイホームまで    トム・ウルフ   晶文社  19831120/3刷

□ サーカス物語    ミヒャエル・エンデ   岩波書店  19840713/1刷

□ 生物としての静物    開高健   集英社  19841010/1刷

□ 10セントの意識革命    片岡義男   晶文社  19731025/5刷

□ 冷血    トルーマン・カポーティ   新潮社  19670420/初版

□ ちょっとピンぼけ    ロバート・キャパ   ダヴィッド社  19561130/新版8刷

□ 考へるヒント    小林秀雄   文藝春秋  19640720/4刷

□ キャッチャー・イン・ザ・ライ    J.D.サリンジャー   白水社  20030601/5刷

□ 定本 岳物語    椎名誠   集英社  19980810/1刷

□ デーヤモンド・ヘッド    篠原勝之   新潮社  19841205/1刷

□ 高丘親王航海記    澁澤龍彦   文藝春秋  19890530/8刷

□ 名人は危うきに遊ぶ    白洲正子   新潮社19960125/2刷

□ 長距離走者の孤独    アラン・シリトー   集英社  19741030/8刷

□ ポロポロ    田中小実昌   中央公論社  19790930/5版

□ 日々の地図    谷川俊太郎   集英社  19830625/4刷

□ 一九七二    坪内祐三   文藝春秋  20030425/初版

□ アフリカの日々    アイザック・ディネーセン   晶文社  19810425/13刷

□ 写真作法    土門拳   ダヴィッド社  19770601/4刷

□ アースダイバー    中沢新一   講談社  20051201/9刷

□ マリリン・モンロー・ノー・リターン    野坂昭如   文藝春秋  19750530/2刷

□ ひらがな日本美術史 3    橋本治   新潮社  19991225/初版

□ 二十世紀    橋本治   毎日新聞社  20010130/初版

□ 見捨てがたきもの    秦秀雄   文化出版局  19710525/1刷

□ 光の教会    平松剛   建築資料研究社  20010214/初版3刷

□ 無妙記    深沢七郎   河出書房新社  19750815/初版

□ 町でいちばんの美女    チャールズ・ブコウスキー   新潮社  19951030/16刷

□ メメント・モリ    藤原新也   情報センター出版局  19930811/新装版4刷

□ 映画の学校    双葉十三郎   晶文社  19740210/2刷

□ アメリカの鱒釣り    リチャード・ブローティガン   晶文社  19751220/5刷

□ 東京モンタナ急行    リチャード・ブローティガン   晶文社  19821025/初版

□ 樹影譚    丸谷才一   文藝春秋  19880801/1刷

□ 南方閑話 南方随筆    南方熊楠   平凡社  19840110/初版1刷

□ 東京奇譚集    村上春樹   新潮社  20050918/初版

□ 限りなく透明に近いブルー    村上龍   講談社  19760805/4刷

□ 工芸文化    柳宗悦   春秋社  19720710/新装版2刷

□ マイク・ハマーへの伝言    矢作俊彦   光文社  19820330/6刷

□ 白の消息    山口信博   ラトルズ  20060929/1刷

□ イデオロギーとしての英会話    ダグラス・ラミス   晶文社  19821025/8刷

□ 地獄の季節    アルチュール・ランボウ   思潮社  19730520/1刷

□ 桂離宮    石元泰博・林屋辰三郎   岩波書店  19821021/初版

□ 花とあきビン    金子光晴   青娥書房  19740915/3刷

□ 美味礼賛    ブリア・サヴァラン   創元社  19531005/初版

□ 気まぐれ美術館    洲之内徹   新潮社  19970610/16刷

□ 四角形の歴史    赤瀬川原平   毎日新聞社  20060225/初版

□ 鞆ノ津茶会記    井伏鱒二   福武書店  19860401/第2刷

□ ラハイナまで来た理由    片岡義男   同文書院  20000304/初版第1刷

□ 土星の徴しの下に    スーザン・ソンタグ   晶文社  19911220/第5刷

□ 星の王子さま    サン・テグジュペリ   岩波書店  19630415/第4刷

□ もめん随筆    森田たま   中央公論社  19361227/4版

□ 美の呪力    岡本太郎   新潮社  19770115/4刷

□ 良心的    山本夏彦   新潮社  19910320/初版

□ Personal Exposures    Elliot Erwitt   W,W,Norton & Co,  198811/1st Edition

□ 以下、無用のことながら    司馬遼太郎   文藝春秋  20010310/第1刷

□ デザインすること、考えること    五十嵐威暢   朝日出版社  19960415/初版第1刷

□ 美藝公    筒井康隆・横尾忠則   文藝春秋  19810220/第1刷

□ Henri Cartier-Bresson    梶川芳友   何必館・京都現代美術館  19971111/初版

□ ライトの住宅    フランク・ロイド・ライト   彰国社  19701110/第1版第4刷

□ レヴィ=ストロースの庭    港千尋   NTT出版  20081128/初版第1刷

□ 雅美生活 北大路魯山人    梶川芳友   何必館・京都現代美術館  19970624

□ ワーズ・ワード    ジャン=クロード・コルベイユ   同朋社出版  19931225/第1刷

□ カメレオンのための音楽    トゥルーマン・カポーティ   早川書房  19731130/初版

□ ハチ公の最後の恋人    吉本ばなな   中央公論社  19960607/初版

□ THE AMERICANS    Roert Frank   STEIDL  200805

□ 厭芸術反古草紙    富岡多恵子   思潮社  19700715/初版

□ 就職しないで生きるには    レイモンド・マンゴー   晶文社  19860320/11刷

□ 風土    和辻哲郎   岩波書店  19691020/36刷

□ 珠玉    開高健   文藝春秋  19900310/第3刷

□ コルシア書店の仲間たち    須賀敦子  文藝春秋  19960120/第6刷

□ 普通のデザイン    内田繁   工作社  20070630/初版

□ 裸のランチ    ウィリアム・バロウズ   河出書房新社  19710615/初版

□ 日々の100    松浦弥太郎   青山出版社  20090410/第2刷

□ ひろい世界のかたすみで    橋本治   マガジンハウス  2005102/第1刷

□ 定本 種田山頭火句集    種田山頭火   彌生書房  19830420/九版

□ ねむれ巴里    金子光晴   中央公論社  19731030/初版

□ 絵本 桜の森の満開の下    坂口安吾・福田庄助   審美社  19900920/初版

□ 山旅の絵本    中村みつを   JTB出版  20021101/初版

□ トゥルー・ストーリーズ    ポール・オースター   新潮社  20050525/5刷

□ Terence Conran on Design    Terence Conran   Conran Octopus  19961024

□ 教育スケッチブック    パウル・クレー   中央公論美術出版  19960315/第2刷

□ わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい   鴨居羊子  三一書房  19730930/初版

□ 測量船 復刻版    三好達治   ほるぷ出版  19820301/第22刷

□ 世に棲む日日    司馬遼太郎   文藝春秋  19730430/初版

□ これは恋ではない    小西康陽   幻冬舎  19970520/第4刷

□ アジアの美味しい道具たち    平松洋子   晶文社  19960530/初版

□ 世界のお茶 ふだんのお茶    ティータイムブックス編   晶文社  19980730/初版

□ 一色一生    志村ふくみ   求龍堂  19820910/第25刷

□ デザインの発見    粟津潔   三一書房  19911015/第一版第1刷

□ 意味がなければスイングはない    村上春樹   文藝春秋  20051125/1刷

□ コレデオシマイ。    山田風太郎   角川春樹事務所   19970124/第3刷

□ 族長の秋    ガルシア・マルケス   集英社   19830608/第1刷

□ 青空    ジョルジュ・バタイユ   晶文社  19710720/6刷

□ 未来圏からの風    池澤夏樹   パルコ出版  19990609/第4刷

□ 万葉集 Manyo Luster    高岡一弥編   ピエブックス  20030606/初版第3刷

□ 女たちよ!男たちよ!子供たちよ!    伊丹十三   文藝春秋  19790801/第1刷

□ 何を見ても何かを思いだす    E・ヘミングウェイ   新潮社  19931020/2刷

□ TinTin Au Congo / les adventures de TINTIN    Herge   casterman  199003

これもまた渾身。

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・ cafe 百花(カフェもか)
・ OPEN 12:00 – 20:00  ( Tue. 12:00 – 17:00 ) /  CLOSED  every Wednesday + 1・3 Tuesday
・大阪府茨木市駅前1-8-28  /  MAP
・072-621-6953 

11月25日 リニューアル・オープンです。

みなさまのお越しをお待ちいたします。

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なかなか追加できない「美しき日本の残像」のブックリスト。

http://kotobanoie.com/