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2011.02.26

my heart is not in my mouth

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まさかゴダールの新作が、この2011年に観られるなんて思わなかったな。

ジャン・ポール・ベルモンドもアンナ・カリーナも、それはカッコイイけれど、
ヌーヴェル・ヴァーグといえば、やはりこの人しかいない。

■ ゴダール・ソシアリスム  Film Socialisme     J.L.ゴダール   VEGA FILM    2010    

まず、Film Socialisme というタイトルに痺れる。

ゴダールがいう2010年の「ソシアリスム」とは、この作品の中でも語られているように、
政治システムとしての社会主義ではなく、「国家」というボーダーのない世界ということだ。

それは、この映画の舞台となる豪華客船ゴールデン・ウェブ号(これもまた象徴的な)が、
最初に寄港するエジプトや、カダフィのリビアで、まさに今起こっていることではないのかと、
この80歳になる生粋の映画監督の、シャープな世界観に震撼とさせられる。

溢れでるような言葉の洪水。

装飾のない感性そのままの、スクリーンショット。

イメージと言葉のコラージュ。

光はなぜある? 闇があるから
ALISSA
カッサンドラ 黙ってお聞きなさい
今や 悪い奴らが真剣だ
民主主義と悲劇はアテネで生まれた
砂漠を 想像してごらん
私は弟を愛している
太陽を襲ってやる 太陽が襲ってくるのなら
空間は死んでいく
伝染病は古来から大事件だ
自由は高くつく!
沈黙は金
言葉のあらゆるイメージを退避させること
私の心は 私の口の中にはない
BE 動詞を使うな
私たちは夜はたらく
幸福なヨーロッパを再び見ることなく・・・

映画は、ひとつのシンフォニーとして構成されていると、ゴダールは言っている。

第1楽章 <こんな事ども Des Choses comme ca >
第2楽章 <どこへ行く、ヨーロッパ  Notre Europe>
第3楽章 <われら人類 Nos Humanites>

朦朧としながら観ていたので、シノプシスはほとんど覚えていないが、時々スクリーンに
立ち現れる美しい映像と、「お金は社会のもの」、「水と同じ?」に始まり、「BE動詞を使うな」、
さらに「私の心は 私の口の中にはない」、そしてエンディングの決定的な一撃にいたるまでの、
ゴダール的メッセージに、揺さぶられ続ける。

交響楽というより、ランボオの詩のような映画だった、と家に戻り、反芻しながら思う。

―  見つかった、
―  何が?
―  永遠が、
―  海と溶け合う太陽が。

46年前の『気狂いピエロ』のエンディング・シーンの南仏の海が、この映画に続いているようだ。

ゴダールは、ROCKだ。

黒澤明は、晩年どんどん幼児化していったけれど、ゴダールは疾走し続けている。
考えてみれば、『勝手にしやがれ』を撮った彼は、まだ20代だったのだ。

全編を通底して流れる葬送曲のようなパイプオルガンの音が頭から離れない。

遺言状とは到底思えない。

死ぬまで前衛。

*

晩冬の本買記。

面白い本も、つまらなかった本も、綺麗な本も、珍しい本も、楽しい本も、役に立つ本も、
シブイ本も、ロックな本も、パンクな本も、HIPな本も、難解な本も、お茶目な本も、
呑気な本も、せっぱつまった本も、ほんとうにいろんな本があって、そんな本のことを
少しでも書きたいのは山々ではあるけれど、カレンダーをかえりみれば、今日すでに26日。

「逃げる」といわれる2月も、考えてみればあと2日しか残されていないわけで、
しかも明日27日は、土屋さんのところでの宴会、明けて月曜日は「百花の百本」の
月一回のメンテナンスと、すでに予定が埋まっており、なんとしても月に2本はアップ
したいというこのブログの本願を成就するためには、この原稿は今日中に書き上げて
しまわないといけないという、重大な局面に陥り。

前回のブログを書き上げた日が浅かったので、今月こそはと、もう何日も前から書き
始めていた原稿は、ムッシュ・ゴダールのおかげで前面改題を余儀なくさせられ、
けっきょく日程は先月と重なり、しかもあと2日。

そんなわけで、この本買記、タイトルの羅列のみという不始末御免。

目ぼしいところを拾い上げて、数えてみればちょうど50冊。
こうやってそのリストを眺めてみると、あたりまえのことながら、読んでみたい本ばかりで、
きっといつかこのうちの何冊かについて、語る機会ががあるんじゃないかと思います。

たとえば、内田百閒の『波のうねうね』という粋な随筆集のことやJoel Joel Meyerowitzs の
 『Wild Flower』という写真集の入手の顛末、池澤夏樹がセレクトした文学全集のこと、
そして最近ちょっと嵌っている『創造の小径』という70年代の新潮社の叢書のことなんか。

HPへの掲載も、早くやりたいし。

□ 草庵茶室の美学     古田紹欽    雪華社  19670325/初版
□ 茶の本     岡倉天心    淡交社   19941027/初版
□ 茶室の材料と構法     北尾春道    彰国社   19670710/第1版第1刷

□ 隠れた秩序     芦原義信    中央公論社   19860320/初版
□ 小さな家の気づき     塚本由晴    王国社   20070315/3刷
□ 建築家の言葉     エクスナレッジ    20101028/初版第1刷
□ MOD EAST     コモエスタ八重樫    TOTO出版   20040420/初版第1刷
□ 住宅巡礼     中村好文    新潮社   20000225/初版

□ エリック・サティ     ジャン・コクトー    深夜叢書社   19861210/新版第5刷
□ ダダ 芸術と反芸術     ハンス・リヒター    美術出版社   19770720/第10刷
□ これはパイプではない     ミシェル・フーコー    哲学書房   19860425/初版
□ 悲しき熱帯 上・下     レヴィ・ストロース    中央公論社   19810410/4刷

□ 贋作吾輩は猫である     内田百閒    六興出版   19830430/5刷
□ 波のうねうね     内田百閒    新潮社   19640831/初版
□ 麗らかや     内田百閒    三笠書房   19680131/第1版
□ 日没閉門     内田百閒    新潮社   19710630/2刷

□ ポール・ランド、デザインの授業     マイケル・クローガー   BNN新社  2008100/初版
□ デザインの輪郭     深澤直人    TOTO出版   20060101/初版第2刷
□ 和力 日本を象る     松田行正    NTT出版   20080428/初版第2刷
□ スモール・アンド・ビューティフル    慶應義塾大学DMF   いちい書房   20050927/第1版第1刷
□ 倉俣史朗とエットレ・ソットサス  21_21DesignSight展覧会ブック   ADP   20101203/初版第1刷
□ ページと力     鈴木一誌    青土社   20070220/第2刷

□ 一人の男が飛行機から飛び降りる     バリー・ユアグロー    新潮社  19980310/9刷
□ TIMBUKTU     Paul Auster    Faber & faver   1999
□ アフリカの日々/やし酒飲み  池澤夏樹-世界文学全集   河出書房新社  20080630/初版
□ 優雅な生活が最高の復讐である     カルヴィン・トムキンズ   リブロポート  1984

□ Satori in Paris     Jack Kerouac    Grove Press  1966/2nd
□ ON THE ROAD     Jack Kerouac   Viking Press   196912/12th

□ ハリウッドのある一日      高野育郎    PARCO出版   19900717/初版
□ Wild Flowers     Joel Meyerowitzs    New York Grphic Society Books  1983
□ 写真の力     飯沢耕太郎    白水社  19950125/初版
□ ふたりのあいだ    エリオット・アーウィット   マグナム・フォト東京支社   19940625/初版第1刷

□ 想像力の散歩 創造の小径     ジャック・プレヴェール   新潮社  19770930/初版
□ マヤの三つの太陽 創造の小径     M,A.アストゥリアス    新潮社  19790330/2刷
□ イカロスの墜落 創造の小径     パブロ・ピカソ    新潮社  19740910/初版
□ 冒頭の一句または小説の誕生 創造の小径     ルイ・アラゴン    新潮社  19750710/初版

□ アルゼンチンババア     よしもとばなな    ロッキングオン   20021225/初版
□ ボーイフレンド物語     富岡多恵子    講談社   19750220/初版

□ 旅する巨人 宮本常一と澁澤敬三     佐野真一    文藝春秋   19970425/第3刷
□ ハッセルブラッド紀行     田中長徳    エイ出版   20061130/第一版第1刷
□ じつは、わたくしこういうものです    クラフト・エヴィング商會   平凡社   20020214/初版第1刷
□ ナンセンスの練習     草森紳一    晶文社   19711130/初版
□ 骨董夜話     白洲正子他    平凡社   19750721/初版第2刷
□ 土屋耕一のガラクタ箱     土屋耕一    誠文堂新光社   19750131/初版 
□ 焼物雑記     井伏鱒二    文化出版局   19850120/1刷
□ 森を読む種子の翼に乗って     ヘンリー・D・ソロー   宝島社   19950425/2刷
□ 舌鼓ところどころ     吉田健一    ゆまにて出版   19770531/第4版
□ 質問     田中未知    アスペクト   20000718/第1版第1刷
□ 不良読本 小説現代特別編集     矢作俊彦/浅田次郎    講談社   20080327/第1刷
□ バスにのって     田中小実昌     青土社   20000320/第2刷  

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