やっぱり本選びは愉しいな。
と、隙き間だらけになった本棚と、その前に遊びかけの積み木のように乱雑に重ねられた
本の塊を眺めながら、Kは独りごちた。
矢部さんの ” CUT the CORNER ” の企画として彼が引き受けた本のセレクション。
最初は鼻歌まじりで、本棚からこれはと思う本を抜き出していたが、そのうちどんどん興が
乗ってきたようで、だんだんと表情が高揚し、その最中には、
「バロウズに、ブックハイはコカインより素敵にトぶからっていってやりたいよ」
などと、わけのわからないことを呟いていたり。
Kが話すところによると、表紙見せの面陳だけで、という矢部さんのアイデアを聞いたとたんに
なにやら怪しげなコンセプトが閃いたらしく、
「たぶんこんな本屋、ニューヨークにもないからね」と、嬉しそうに語っていた。
なんでも、そのプランを決めたのは10日ほども前の話で、じつはもうその時から頭の中には
そのことしかなかったみたいだが、珍しいことに、日曜日に彼がやっている本屋に、二組の
来客があり、とにかくそのお客さんたちが帰るまでは何もできなかったもんだから、どうも
かなりのストレスが溜まっていたようだ。
だから、その人たちが帰った日曜の夜、堰を切ったように、ことがが始まってしまったのだ。
高揚した気分のまま本棚を一巡りし、ひととおりの粗選りを終えたKの心に、次に去来したのは、
その辺がいかにもKらしい話なんだけれど、不安、というか心配だった。
「売れたらどうしよう」
どうも選んだ本への自惚れが高じて、手放すのが嫌になったらしい。
もともと自分が読みたい本だけ、というのが彼の本屋の方針だそうだから、そんな気持ちに
なってしまうのは仕方がないことかもしれないけれど、いまさらなに言うとんねんっちゅう話。
やれやれ。
このショップの生みの親であり、 ” God Father ” でもある建築家矢部達也さんのお誘いで
ふたたび、BOOKS+コトバノイエのセレクションによるブックショップをオープンします。
ショップの名前は、「水土書店」。
矢部さんのオフィスの 1F にある、” CUT the CORNER ” での企画で、読んで字のごとく、
水曜日と土曜日だけオープンするHIPな本屋です。
BOOKS+コトバノイエの存在は、矢部さんなしではあり得ませんでした。
そういう意味で、矢部さんの「空き地」でリアルショップを開けることは、望外の歓びです。
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■ 大阪市福島区野田2-2-16 矢部達也建築設計事務所
オフィス・ハウス・オフィス 1F
■ 2010/05/22 – 2010/07/24 毎週水曜日/土曜日のみ
■ Store Hours 12:00 – 18:00
■ お問い合わせは 090-1026-8654 コトバノイエ加藤まで
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矢部さんからすべて面陳(表紙を見せる展示)でいきましょう、と言われて浮かんだのが
「本の佇まい」というテーマでした。
Book is not just for reading.
そこに書かれていることだけじゃなく、本そのものがもつ存在感にこだわったセレクション
というのは開店当初から標榜してきたことですから、この「 selection of selection 」には、
そのエッセンスが濃縮されているんじゃないかと自負しています。
そして考えてみるとそれは、 iPad の登場で話題になっている電子書籍へのアンチ・テーゼ
になっていることにも気づきました。
まさに、” the bookstore you’ve never seen before ” だと思います。
反語ではなく、ホントに売りたくない本ばっかりなので、たぶん売れたるたびに泣くでしょう。
お誘い合わせの上、お気軽に、心してご来店ください。
May 12, 2010
BOOKS+コトバノイエ 店主敬白
P.S
■ 水土書店のオープニング・パーティを行います。
→ 5月22日 土曜日 PM6:00頃より
→ 野田 CUT the CORNER (矢部達也建築設計事務所内)
自由参加ですので、ぜひお越しください。