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2008.01.19

dig where you stand

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books+コトバノイエをオープンして50余日、少しずつ伸びていく本売と裏腹に、本買がこのところ不作で。

不作のときも黙々と耕しておかなければ、豊穣の女神が微笑んでくれないということは、わかっている。
こういうときに河岸をかえたり、いつもと違う筋を狙ったりしてペースを変えることはよくあるけれど、それで
いい結果を呼び込むなんてことは実はあまりなくて、結局は、いつものように同じペースで、同じところを
耕し続けるっていうことが大事なところ、色川武大さんがいうように、フォームを守ることがプロ的悦楽への
原則なんだと思う。

ただ、売ることのフォームが、まだよくつかめない。

本を選びそれを買うことはいままでもずっとやってきたことだから、手のうちに入っている感じはもっている。
でもその本を「売る」、しかもまったく知らない人のところへ届けるなんていうことは、未体験ゾーンの出来
事で、実際にことが始まって見ると、本との距離のとりかたがよくわからず、なんとなく ambivalent な気分
のままに、これもいい本なんだけど、などと呟きながら、梱包し、メールを返し、本を送っている。

もともと売るために買った本じゃなく、自分が気に入って買った本ばかりなんだから手放したくないのはあた
りまえといえばあたりまえ、でもそういう執着心は、古書店の看板を揚げた時点で割り切ったつもりでいた。
どうしても手放したくない本はブックリストに載せなければいいんだから、なんて思いながら。

でもやっぱりそれでは面白くない。
こんないい本があるんだよって伝えることがこのブックストアの真意だし、ほんとうは「売ってもいい」本に
売る価値なんてないんだから。

一冊一冊の本をそういった想いをこめながらセレクトすること、そしてそれを惜しみなくリストアップすること、
そこからしかホントの愉しさは生まれてくるわけはないし、それを続けることでしか、ブックストアとしての
正しいフォームは固まらないと、あらためて覚悟する。

本を「売る」のではなく、気持ちをこめて本を選び、それをひたすら並べるだけなんだ。

*

そんな気分のなかで、最近売れた本への懺悔録、本買記ならぬ本売記を少し。

アッキレ・カスティリオーニ 自由探求としてのデザイン   多木陽介  AXIS  20071128 初版  
   
そんなかんたんに売れるとは思わなくて、しっかりと読みもせずリストに載せてしまったら売れてしまった一冊。
去年11月に発行されたばかりの新古本だけれど、イタリアンデザインの巨匠カスティリオーニの制作への姿勢
を、イタリア在住の演出家が紐解いた面白そうな本だった。帯に書かれていた「デザインを考え抜いて、それ
からこの本を読んだら、みんなここに書かれていた。」という深澤直人のコピーも気になっていたのに。

ちょっと後悔。

イームズ入門   イームズ・デミトリオス   日本文教出版  20041020 初版

イームズ夫妻の孫で、現イームズ・オフィスの主宰であるデミトリアスが綴った祖父母へのオマージュ。
カスティリオーニを買っていただいた神奈川県の人に続けざまにオーダーをいただいた。
どちらも amazon を通しての注文だが、事前のやり取りがなく、いきなり売れたという知らせが amazon から
入り、あわてて発送するというカタチに微妙な違和感を感じている。

どこかにこの本を気に入ってくれた人がいたということはとても嬉しいんだけれど 。

ロック・アーティスト来日ツアーのパンフレット

もっとも驚いたのがこのパンフレットだった。
倉庫に眠っていた1970年代初頭の来日ロック・アーティスト(レッドツェッペリン/サンタナ/CCRなど)の
ツアーパンフレットをモノは試しとヤフオクに出品したら売れた、それもびっくりするような価格で。
しかもたぶん売れないだろうと低い価格を設定した JETHRO TULL や  MAHAVISHNU ORCHESTRA
なんていうマイナー(と思っていた)ものに一番先に値がついて、インターネットのロングテールというものを
あらためて思い知らされた。
そしてもっとびっくりしたのは、このオークションの落札者から、チケットの半券ないですかと訊かれたこと。

取り扱うものは本だけでなく、printed matter (印刷物)全般であるという古書店の心得を実感しました。

俵屋の不思議   村松友視  世界文化社  19990715 8刷

コトバノイエの取材に来られた某誌の編集の方がご購入、帰りの新幹線の中でこの本のおかげで退屈
せずに過ごせました、とのメッセージを後日いただいた。
体裁も内容もなかなかいい本で、少し惜しくもあったけれど、こうしたコミュニーケーションの中で本が流通
するんなら本望です。

個人的には、俵屋のご亭主(故人)で写真家のアーネスト・サトウ氏に興味津々。

PORTRAIRTS    RICHARD AVEDON  TheNoondayPress  1976

いつどこで買ったのかまったく思い出せない一冊、おそらく学生の頃に新刊で手に入れたんじゃないかと思う。
ポートレート写真の金字塔といわれる作品集で、けっこう立派なプライスを設定したんだけれど、amazon に
出品したら、あっさりとご成約。
やはり「絶版-巨匠」というコンビネーションにはそれなりのパワーがあるようです。 
それともたまたま?

価格が高いものほど惜しい気持ちが強くなるのは、まだまだ修行が足りない証拠でしょう。

住宅読本     中村好文  新潮社  20040620 1刷

予想どおり女性の方に買っていただいて、sweet honey 好文さんの面目躍如といったところ。
その優しい語り口とはうらはらに、けっこう硬質な住宅論を提示していて、数ある住宅本のなかでも良質の一冊
だと思うけれど、すでに役目を終えたと感じていた本なので、残心はない。

give and take 、こういう even な感じの売買が理想的なのですが。