本棚のレイアウトを変えてみた。
ウェブサイト上のブックリストに “not for sale” というアイテムを置くことは、ひとつの表現(まあ愛嬌のようなものですが)と考えてやっていることだけれど、ショップの本棚に「売らない本」が混在しているのは、やや不見識じゃないかという気がしてきたからだ。
private と public が渾然一体となったショップ・スペースというのも、それはそれで悪くはないとは思うが、その本を欲しい人を前にして、それは売り物ではないのだと伝えるのは、かなり心苦しくて、やはりもう少しわかり易くディスプレイするのがショップとしての矜持だと考え直した。
建物の構造体を兼ねたコトバノイエの12面の棚のうち7面を書架としてつかっている。
これまでもジャンルや著者といったきっちり分類された並べ方ではなく、背表紙の景色やその本が持って いる気配のようなもので括ってきたし、本棚のそういうちょっと foot-loose な雰囲気が気に入っているから、これからもそれは変えることはたぶんないと思うけれど、その中に異分子が混ざっていることで淀みのようなものがでるなら、どうしても手元に残しておきたい本のためのプライベートな場所を用意してやってもいいんじゃないかと考えたわけだ。
でもそこからが、ちょっと大変だった。
そもそもこの本棚にある本は、その時々の自分のアンテナにひっかかる本を野放図に買ってきたものばかりで、ブックストアの看板を上げたあとも、商品として仕入れた本は一冊もなく、だからこその「本買(仕入ではなく)記」だし、だからこそのコトバノイエだと思っている。
その中から、今まであまり意識したことがなかった「手離したくない本」ってやつを選ばなければいけないということなると、本の塊を前にして、それぞれに問いかけなければならない。
どうしても残したい本のセレクションに、合理的なモノサシなんて存在するわけがないから、結局は、自分自身の心の奥に向かい合うことになってしまうんだ。
コレハホントウニイルノカ?
オマエハココニイタイノカ?
で、そんな風に四苦八苦しながら(実はけっこう愉しく)、セレクトしたのが例えばこういう本たちだ。
□ 定本 坂口安吾全集 全13巻 坂口安吾 冬樹社
□ 夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった 谷川俊太郎 青土社
□ 東京のドン・キホーテ 小林信彦 晶文社
□ 信楽 壺中の天 MIHO MUSEUM 図録
□ 冷血 IN COLD BLOOD トルーマン・カポーティ 新潮社
□ 愛蔵版 阿佐田哲也麻雀小説自選集 阿佐田哲也 双葉社
□ アウトロー・ブルース OUTLAW BLUES ポール・ウィリアムス 晶文社
□ ぼくは散歩と雑学がすき 植草甚一 晶文社
□ かくれ里 白洲正子 新潮社
□ フラニーとゾーイー FRANNY and ZOOEY J・D・サリンジャー 新潮社
□ TARANTURA BOB DYLAN PANTHER
□ 10セントの意識革命 片岡義男 晶文社
□ ルーシー・リー展 静寂の美へ 滋賀県立陶芸の森 図録
□ DEREK JARMAN’S GARDEN DEREK JARMAN THAMES AND HUDSON
□ 路上 ON THE ROAD ジャック・ケルアック 河出書房新社
□ ラディカルな意志のスタイル STYLES OF RADICAL WILL スーザン・ソンタグ 晶文社
□ ボブ・ディラン全詩集 WORDS by Bob Dylan ボブ・ディラン 晶文社
□ 珠玉 開高健 文藝春秋
□ 家 1969→96 安藤忠雄 住まいの図書館出版局
□ 東京モンタナ急行 THE TOKYO-MONTANA EXPRESS リチャード・ブローティガン 晶文社
□ CASA BARRAGAN 齋藤裕 TOTO出版
□ 青山二郎の眼 MIHO MUSEUM 図録
□ 完訳 釣魚大全 THE COMPLETE ANGLER アイザック・ウォルトン 虎見書房
□ 89 橋本治 マドラ出版
□ ミステリー・トレイン MYSTERY TRAIN グリール・マーカス 第三文明社
□ 世に棲む日々 司馬遼太郎全集 27 司馬遼太郎 文藝春秋
□ 書を捨てよ、町へ出よう 寺山修司 芳賀書店
□ アデン・アラビア ADEN ARABIA ポール・ニザン 晶文社
□ 建築へ VERS UNE ARCHITECTRURE ル・コルビュジェ‐ソーニエ 中央公論美術出版
□ バウハウス 歴史と理念 利光功 美術出版社
今このときの ” kotobanoie permanent collection ” あるいは ” all time best ”
折にふれ、流れていくかもしれないけれど。
あらためてこうやってリストアップしたものを眺めてみると、生身を晒しているようでとても恥ずかしい。
そして何よりも、この20年ほどぜんぜん進化していないようなのが、俄然ヤバイ。
でもこれでボンヤリしていた境界線がはっきりして、なんとなく気分爽快。