百花の百本。
木村家本舗の余韻も冷めぬままに、というかその流れで、ブックセレクションを頼まれた。
依頼の主は、茨木の駅前で築100年の古民家をリノベーションして、カフェ+ギャラリー
+設計スタジオ = GRAN FABIRIQUE(グランファブリック)を主宰する河上さん。
そのカフェ、「cafe 百花(モカ)」にライブラリイを設置したいということだが、じつは河上さん
とは、一年近く前から何かいっしょにやりましょうと話をしていて、それがこのcafe百花 の
リニューアルを機に、叶うことになったわけだ。
近藤さんの「one coin / one note」、矢部さんの「水土書店」、木村さんの「木村家本舗」。
今年は思わぬ幸運に恵まれて、本を介してのとても楽しいセッションをすることができたし、
10月のスケジュールがけっこうハードだったので、年内はじっくりと本を集めてみようなんて
ぼやっと考えていたんだけれど、これは受けてたつしかない。
恥ずかしい話だが、齢50を過ぎると、人は生き急ぐのだ。
books+コトバノイエ というブックショップを始めたころに、こんなことを夢想した。
今のように、本のコーディネーションという言葉がポピュラーになる前のこと。
本のセレクションというサービスができないかと思う。
Amazonのセレクション・ソフトは情報の集積がベースだけれど、このソフトをもう少し
繊細なものにして、人と人とのインターフェイスの中からでてくる直感的なセレクション
を提供する、司書的なものでもキュレーター的なものでも、まして書店でもなく、いわば
「本の Stylist」とでもいったようなものだ。そこに書かれている内容だけじゃなく、ブックデザインや組み合わせも含めたセレクションで、
そこに在ること自体が、そのスペースやそのショップやその人の表現となるような本棚を、
デザインすること。たとえば素敵なライブラリーのあるリゾートホテル、週刊誌や新聞だけじゃない歯医者さん、
美しい装丁の写真集が並んでいるブティック、エバーグリーンな随筆の置いてある輸入車の
ディーラー、付加価値や差別化がマーケティングのキーワードとなっている時代に、本という
ものが(単にディスプレイとしてだけじゃなく)、そのひとつのマティリアルになることが
あったっていいんじゃないだろうか。
コトバノイエを始めたばかりだったその頃には、そんなことがすんなりと実現できるとは
思っていなかったけれど、機会に恵まれてそんな妄想が少しずつ現実になっていく様を、
リアルに体感できたのは、僥倖としか表現のしようがない。
で、以下がその百本である。
リニューアルされた百花のスペース、そしてそこで珈琲を飲みながら寛ぐお客様とこの本たち
がどのように交流していくのかは、想像を巡らせるしかないが、ライブラリイでありディスプレイ
であり、販売していく商品という、多重の意味を担う存在になるはずだし、これまでのように
期間を限ったものではなく、常設のプロジェクトだから、できるだけ奇をてらわないナチュラルな
構成(といってもやはりクセがあるのは否めませんが)で、というのが正直な想い。
河上さんからは、殺し文句のように、「自由にやってください」といわれていたが、テーマの
決まっていないセレクションほど難しいものはなく、例によってさんざん悩み(愉しみ)ながら
のピックアップだったが、けっきょくこんなリストでスタートすることにした。
このリストが、どのように移り変わっていくか、それこそがこのプロジェクトの真価なんだろうな。
one hundred books for cafe moka 2010/11/18 ( ordered by stock no. )
□ モンタナ急行の乗客 新井敏生 新潮社 19941030/1刷
□ 怪しい来客簿 色川武大 話の特集 19770420/初版
□ ぼくのニューヨーク地図ができるまで 植草甚一 晶文社 19770630/初版
□ チャンピオンたちの朝食 カート・ヴォネガットJr. 早川書房 19840815/3
□ バウハウスからマイホームまで トム・ウルフ 晶文社 19831120/3刷
□ サーカス物語 ミヒャエル・エンデ 岩波書店 19840713/1刷
□ 生物としての静物 開高健 集英社 19841010/1刷
□ 10セントの意識革命 片岡義男 晶文社 19731025/5刷
□ 冷血 トルーマン・カポーティ 新潮社 19670420/初版
□ ちょっとピンぼけ ロバート・キャパ ダヴィッド社 19561130/新版8刷
□ 考へるヒント 小林秀雄 文藝春秋 19640720/4刷
□ キャッチャー・イン・ザ・ライ J.D.サリンジャー 白水社 20030601/5刷
□ 定本 岳物語 椎名誠 集英社 19980810/1刷
□ デーヤモンド・ヘッド 篠原勝之 新潮社 19841205/1刷
□ 高丘親王航海記 澁澤龍彦 文藝春秋 19890530/8刷
□ 名人は危うきに遊ぶ 白洲正子 新潮社19960125/2刷
□ 長距離走者の孤独 アラン・シリトー 集英社 19741030/8刷
□ ポロポロ 田中小実昌 中央公論社 19790930/5版
□ 日々の地図 谷川俊太郎 集英社 19830625/4刷
□ 一九七二 坪内祐三 文藝春秋 20030425/初版
□ アフリカの日々 アイザック・ディネーセン 晶文社 19810425/13刷
□ 写真作法 土門拳 ダヴィッド社 19770601/4刷
□ アースダイバー 中沢新一 講談社 20051201/9刷
□ マリリン・モンロー・ノー・リターン 野坂昭如 文藝春秋 19750530/2刷
□ ひらがな日本美術史 3 橋本治 新潮社 19991225/初版
□ 二十世紀 橋本治 毎日新聞社 20010130/初版
□ 見捨てがたきもの 秦秀雄 文化出版局 19710525/1刷
□ 光の教会 平松剛 建築資料研究社 20010214/初版3刷
□ 無妙記 深沢七郎 河出書房新社 19750815/初版
□ 町でいちばんの美女 チャールズ・ブコウスキー 新潮社 19951030/16刷
□ メメント・モリ 藤原新也 情報センター出版局 19930811/新装版4刷
□ 映画の学校 双葉十三郎 晶文社 19740210/2刷
□ アメリカの鱒釣り リチャード・ブローティガン 晶文社 19751220/5刷
□ 東京モンタナ急行 リチャード・ブローティガン 晶文社 19821025/初版
□ 樹影譚 丸谷才一 文藝春秋 19880801/1刷
□ 南方閑話 南方随筆 南方熊楠 平凡社 19840110/初版1刷
□ 東京奇譚集 村上春樹 新潮社 20050918/初版
□ 限りなく透明に近いブルー 村上龍 講談社 19760805/4刷
□ 工芸文化 柳宗悦 春秋社 19720710/新装版2刷
□ マイク・ハマーへの伝言 矢作俊彦 光文社 19820330/6刷
□ 白の消息 山口信博 ラトルズ 20060929/1刷
□ イデオロギーとしての英会話 ダグラス・ラミス 晶文社 19821025/8刷
□ 地獄の季節 アルチュール・ランボウ 思潮社 19730520/1刷
□ 桂離宮 石元泰博・林屋辰三郎 岩波書店 19821021/初版
□ 花とあきビン 金子光晴 青娥書房 19740915/3刷
□ 美味礼賛 ブリア・サヴァラン 創元社 19531005/初版
□ 気まぐれ美術館 洲之内徹 新潮社 19970610/16刷
□ 四角形の歴史 赤瀬川原平 毎日新聞社 20060225/初版
□ 鞆ノ津茶会記 井伏鱒二 福武書店 19860401/第2刷
□ ラハイナまで来た理由 片岡義男 同文書院 20000304/初版第1刷
□ 土星の徴しの下に スーザン・ソンタグ 晶文社 19911220/第5刷
□ 星の王子さま サン・テグジュペリ 岩波書店 19630415/第4刷
□ もめん随筆 森田たま 中央公論社 19361227/4版
□ 美の呪力 岡本太郎 新潮社 19770115/4刷
□ 良心的 山本夏彦 新潮社 19910320/初版
□ Personal Exposures Elliot Erwitt W,W,Norton & Co, 198811/1st Edition
□ 以下、無用のことながら 司馬遼太郎 文藝春秋 20010310/第1刷
□ デザインすること、考えること 五十嵐威暢 朝日出版社 19960415/初版第1刷
□ 美藝公 筒井康隆・横尾忠則 文藝春秋 19810220/第1刷
□ Henri Cartier-Bresson 梶川芳友 何必館・京都現代美術館 19971111/初版
□ ライトの住宅 フランク・ロイド・ライト 彰国社 19701110/第1版第4刷
□ レヴィ=ストロースの庭 港千尋 NTT出版 20081128/初版第1刷
□ 雅美生活 北大路魯山人 梶川芳友 何必館・京都現代美術館 19970624
□ ワーズ・ワード ジャン=クロード・コルベイユ 同朋社出版 19931225/第1刷
□ カメレオンのための音楽 トゥルーマン・カポーティ 早川書房 19731130/初版
□ ハチ公の最後の恋人 吉本ばなな 中央公論社 19960607/初版
□ THE AMERICANS Roert Frank STEIDL 200805
□ 厭芸術反古草紙 富岡多恵子 思潮社 19700715/初版
□ 就職しないで生きるには レイモンド・マンゴー 晶文社 19860320/11刷
□ 風土 和辻哲郎 岩波書店 19691020/36刷
□ 珠玉 開高健 文藝春秋 19900310/第3刷
□ コルシア書店の仲間たち 須賀敦子 文藝春秋 19960120/第6刷
□ 普通のデザイン 内田繁 工作社 20070630/初版
□ 裸のランチ ウィリアム・バロウズ 河出書房新社 19710615/初版
□ 日々の100 松浦弥太郎 青山出版社 20090410/第2刷
□ ひろい世界のかたすみで 橋本治 マガジンハウス 2005102/第1刷
□ 定本 種田山頭火句集 種田山頭火 彌生書房 19830420/九版
□ ねむれ巴里 金子光晴 中央公論社 19731030/初版
□ 絵本 桜の森の満開の下 坂口安吾・福田庄助 審美社 19900920/初版
□ 山旅の絵本 中村みつを JTB出版 20021101/初版
□ トゥルー・ストーリーズ ポール・オースター 新潮社 20050525/5刷
□ Terence Conran on Design Terence Conran Conran Octopus 19961024
□ 教育スケッチブック パウル・クレー 中央公論美術出版 19960315/第2刷
□ わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい 鴨居羊子 三一書房 19730930/初版
□ 測量船 復刻版 三好達治 ほるぷ出版 19820301/第22刷
□ 世に棲む日日 司馬遼太郎 文藝春秋 19730430/初版
□ これは恋ではない 小西康陽 幻冬舎 19970520/第4刷
□ アジアの美味しい道具たち 平松洋子 晶文社 19960530/初版
□ 世界のお茶 ふだんのお茶 ティータイムブックス編 晶文社 19980730/初版
□ 一色一生 志村ふくみ 求龍堂 19820910/第25刷
□ デザインの発見 粟津潔 三一書房 19911015/第一版第1刷
□ 意味がなければスイングはない 村上春樹 文藝春秋 20051125/1刷
□ コレデオシマイ。 山田風太郎 角川春樹事務所 19970124/第3刷
□ 族長の秋 ガルシア・マルケス 集英社 19830608/第1刷
□ 青空 ジョルジュ・バタイユ 晶文社 19710720/6刷
□ 未来圏からの風 池澤夏樹 パルコ出版 19990609/第4刷
□ 万葉集 Manyo Luster 高岡一弥編 ピエブックス 20030606/初版第3刷
□ 女たちよ!男たちよ!子供たちよ! 伊丹十三 文藝春秋 19790801/第1刷
□ 何を見ても何かを思いだす E・ヘミングウェイ 新潮社 19931020/2刷
□ TinTin Au Congo / les adventures de TINTIN Herge casterman 199003
これもまた渾身。
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・ cafe 百花(カフェもか)
・ OPEN 12:00 – 20:00 ( Tue. 12:00 – 17:00 ) / CLOSED every Wednesday + 1・3 Tuesday
・大阪府茨木市駅前1-8-28 / MAP
・072-621-6953
11月25日 リニューアル・オープンです。
みなさまのお越しをお待ちいたします。
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