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2010.04.10

a short trip to kyoto

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“spot light ” のテーマを「旅」と決めて、本棚から「旅の本」をピックアップしていたら、
ほんとに旅に行きたくなってきた。

そう思ったとたん、なぜか京都がうかんだ。

少し前の、ある古書店とのメールや本のやりとりが心に残っていたのかもしれないが、
たぶんそんなことではなく、流れてきた水が少しずつたまって、やがて溢れだすように、
まあとにかく行きたくなってしまったのだ。

本屋と美術館、久しぶりにイノダのコーヒーも飲みたい。

学生時代を過ごした街だけれど、大阪圏で暮らしていると、京都は近くて遠い。
魅力的な場所がいくつもあって、ことあるごとに行ってみたいなあと思うが、距離感が
いかにも微妙で、いざとなるとなかなか足が向きにくいところなのだ。

でもそれを「旅」と考えれば、すこし面白くなってくる。
旅といっても、ただ泊まろうと決めただけで、実際やったことはホテルに予約をいれた
だけのことだが、それだけでもちょっと非日常な感じになるから不思議なものだ。

このところ季節外れの雪が降ったり、変な天気が続いていたけど、陽気も少し春めいた
兆しもあったから、あわよくば、どこかで桜が見られるかもしれないと思ったりもしていた。

京都南インターを降りて市内へ向かうと、東寺あたりから街の気配が変わる。
縦にまっすぐのびる大きな路、それを横切る小さな通り、そしてその街並みに点在する
寺社や旧い町屋。

京都の街を走るのは思いだせないくらい久しぶりで、なんかとても新鮮。
やっぱり旅は移動の距離じゃないんだと、あらためて実感する。

□ 高麗美術館

紫野にある住宅街の中のプライベート美術館だが、李朝の白磁壺が、ガラスを隔てずに
見られるということを聞いていて、ずっと行ってみたいと思っていた。

朝鮮の磁器は、精巧な象嵌の入った高麗青磁も素晴らしいが、無名の陶工が雑器として
拵えた白磁の大壺は、造形も大らかで、なんともいえない「ふくよかさ」を感じさせる。

間近で見るその素朴な「白」には、他のどの陶器にもない無垢な精神性があった。

利休は、李朝朝鮮の古い飯茶碗(一説には日本からオーダーされたともいわれている)を、
「井戸茶碗」と名づけ茶道具に見立てたが、白磁の壺も、季節の花木を生けて床の間に
置けば、きっと美しい景色が現れてくれるんじゃないかと思う。

ひとつほしい。

紫野から、円町。

□ 山崎麺二郎 

コトバノイエの名刺や、one coin / one note のロゴをデザインしてくれた山崎くんの弟が、
円町でラーメン屋を始めたときいて、行ってみることにした。マニアに評判の店らしい。

メニューは、つけめん・塩ラーメン・しょうゆラーメンの3品のみ。

麺打ちの職人だというその店主の所作は、まるで禅僧のようで、お兄さんにも共通する
ストイックな雰囲気が店全体に充満していて、なんかいい感じ。

とにかくこんな静かなラーメン屋に入ったことない。

麺最高。

円町から寺町経由一乗寺。

□ 三月書房

今回の古本ツアーは、一乗寺 – 百万遍あたりと狙いは絞っていたが、京都といえば、
まず何をさておいても外せない三月書房。

学生時代に通いつめた本屋で、今はもう代が変わっているが、いつ行っても同じ佇まい。
ホントに小さな本屋さんだが、そのセレクションにはいつも感心させられる。

京都では、やはりここがいちばんだ。

□ 恵文社一乗寺店 

ギャラリーや雑貨の売り場を併設したセレクトショップとして超有名な本屋だが、
じつはこの日が初体験。

もちろん魅力的な本はいっぱいあったし、買う気も満々だったけれど、手が伸びない。
いつのまにか新品の本を買えない古本体質になっていることに愕然。

本屋見学ではちっとも面白くない。

□ 萩書房

恵文社の近くの古書店。
いかにも古本屋と行った佇まいのところで、トニー谷の書票がイカしてる。
雑然とした雰囲気にちょっとその気になったが、無理買い気味の2冊のみ。

セドリするには、ちょっと高い。

□ ガケ書房

2004年創業の新しい本屋。
スタイルは先達の恵文社と似たような感じだが。もう少しターゲット年齢が低いようだ。
雑貨を売るのはかまわないが、きちんとセレクトされているような気がしない。

いかにも今風だが、なんとなく一本調子なのが、少し退屈。

ここでも本が買えず、ややストレスがたまってきた。

気分転換に、京大北門前の進々堂でいっぷく。
定番のコーヒーショップだが、高い天井と大テーブルに、とりあえず和む。

This is Kyoto.

百万遍から銀閣寺

□ 善行堂

同世代の人が、去年最近始めた新しい古本屋。

まず、仕事を辞めて古本の実店舗をオープンしたという、そのハートにとにかく敬服。
ツアーでもっとも行きたかったのは、じつはこの本屋さんだった。

小さい店舗だがセレクションは悪くない。
やっぱり本屋の雰囲気は、店主の人柄がそのまま現れるし、そうじゃなきゃ面白くない。
善行堂は、山本さんそのものだ。

山本さんと少し話し、握手をかわした。

5軒の本屋を廻って買えたのがこの10冊。
本は悪くないが、10冊は少なすぎる。ホントはこの5倍くらい買いたかったんだけど。

■ 文房具を買いに   片岡義男   東京書籍   20030813/第1刷
■ さらば気まぐれ美術館   洲之内徹   新潮社   19880925/3刷
■ そして天使は歌う   久保田二郎   冬樹社   19810820/初版第1刷
■ 自分の謎 大人の絵本2   赤瀬川原平   毎日新聞社   20051125/初版
■ 青山二郎の素顔   森孝一編   里文出版   20061120/新装版
■ 日本のよさ   吉田健一   ゆまにて出版   19771010/初版
■ アメン父   田中小実昌   河出書房新社   19890420/再版
■ 厭芸術反古草紙   富岡多恵子   思潮社   19700715/初版
■ 麻薬書簡 現代の芸術双書19   W.バロウズ/A.ギンズバーグ   思潮社  19690701/第2刷
■ 就職しないで生きるには   レイモンド・マンゴー   晶文社   19860320/11刷

□ After Hours

清水寺のライトアップ夜桜
銀閣寺の「おめん
堺町錦小路の錦湯

□ Next Day

三条堺町イノダコーヒー本店の「京の朝食」

嵯峨野の落柿舎祇王寺常寂光寺、そして寂庵の瀬戸内寂聴

雨が降って、大山崎山荘には行けなかった。

「無数の小さな偶然の集積の上に立って、人々は『今』の空気を吸っている( by David Zoppetti )」

旅は、その偶然に会うための behavior だ。

*

最近追加した「これがHIPだ」のブックリスト。

https://www.kotobanoie.com/