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2007.10.18

the books I bought

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そもそも買ってきた本を見せびらかす、というのがこの本買記の始まりだった。


建築家Yさんとのゲームのような on line でのやりとりである。 


その原点に立ち返って、ここ何日かの間の「本買」つまり “the books I bought” を羅列してみる。 


まずは10月7日。 


この日は「第7回四天王秋の大古本祭」なるものに行ってきた。 

いわゆる古本市というものを見るのは初めての経験で、最初はなんか本がいっぱいあってワクワクしたけれど

廻ってるうちにどんどんテンションが下がってきた、イイモノないし、ぜんぜん安くもないし。 



旧態依然、どうも基本的に掘り出しものの古書を探している人がいるっていうことを前提としたマーケティング
にしか思えないが、掘り出し物を見つけるためにはそれを判断する力(目利き力)が要るし、目利きになるには

それなりの時間やお金の投資が必要なわけで、今の本好き(本に限ったことではないけれど)の人が求めて

いるのは、そんな面倒くさいプロセスじゃなくて、イイモノ(掘り出し物であったり、目利きが選んだもので


あったり)だけが置いてあるショップから、自分の好みに合うものを選びたいということなんじゃないかと思う。

それももうちょっとカジュアルな雰囲気のなかで。 



でもせっかくだから何冊か買いました。


庭仕事の愉しみ    ヘルマン・ヘッセ  草思社   19960912 12刷 

たてもの曼荼羅    李家正文  人物往来社  19620201 初版 

ベーシックデザイン   馬場雄二   ダヴィッド社  1968110 12刷 

日本さまざま      長谷川如是閑  大法輪閣  19680125 2刷 

日本人と美            竹山道雄   新潮社  19701130 初版 


この中では、元本屋の店員にしてノーベル文学賞受賞者、ヘッセの庭仕事のエッセイが面白そう。

「庭」がひとつのテーマでもあるコトバノイエとしては、このドイツの文学者が庭というものとどう向き合うかに

興味津々。 



あと雑誌のバックナンバーで「Pen」と「LIVING DESIGN」を何冊か。



10月14日の日曜日に行ったのは天神橋筋、ここには何軒か「買える」古本屋さんが揃っている。


梅田での所用のついでに足をのばしたわけだが、そういうついでの時ってイイモノが見つかることがけっこう多い。

この日も何冊か面白そうな本があったので、少し予算(といっても3000円なんですが)オーバーしてしまった。 



SAMURAI 佐藤可士和のつくり方    佐藤悦子  誠文堂新光社  20071001 初版 

今をときめくクリエイター佐藤可士和のビジネスパートナー兼夫人の書いた新古本。 

エディターの視点からのクリエイティブ・ビジネスということで個人的な関心もあったし、広告代理店出身という
彼女の手際にも興味があったんだけれど、嫁でマネージャーというだけでも充分恐ろしいのに、 “才能ある” 旦那

さんへの信仰心が露骨すぎてちょっといただけません。 

何よりも「クリエイターのブランディング」なんていうわけの分からない言葉を一般的にしないでいただきたい。 

早いはなし、旦那をいっぱしのプロに仕立て上げる糟糠の妻のモダン版じゃないですか。 

最後に少しだけ登場する佐藤可士和という人がマザコンに見えてきた。 


彼が本気で「ミケランジェロやピカソやアンディ・ウォーホールのような」時代のアイコンになりたいのなら、

この “ヨーコ・スタイル” はやめたほうがいいでしょう。 

ヨーコと知り合ったときジョンはすでに時代のアイコンだったし、彼は独りでその場所まで行ったんだから。



ああでもなく、こうでもなく    橋本治  マドラ出版  20000301 初版 

東大闘争のカルトヒーローのひとりだから、もう団塊世代の代表的な頭脳といってもいいくらいの人だ。 

この本は「広告批評」に10年以上にわたって連載されているクロニクルの単行本第一弾で、1996年12月から
1999年8月までの時評、単行本も今は5冊目になっている。

この人はとにかく「自分の頭で考える」ということの本尊のような人で、”I am different and I am proud of it”

というこの世代独特の HIP感を徹底して持ち続けているのが素晴らしい。    

ひょっとして天才じゃないかと思う。 




私の書斎     地産出版   19780810 初版     

いろんな人の書斎の写真の中で、最後に植草甚一さんの書斎が載っていたので思わず買ってしまった。

自ら「本の入れもの」といっているスゴイ部屋、2万冊がおさめられているらしい。 

古本と「遊ぶんです」という感覚がなんともファンキーなところです。 



ホックニーが語るホックニー    デヴィッド・ホックニー  PARCO出版   19840306 初版 

今はへんな本しか造っていないみたいだけれど、このPARCO出版は 、西武文化華やかなりし80年代に、

ちょっといい現代美術の本(いかにも西武的なチョイスではあったけれど)を造っていて、この本もその1冊。 


「待望の日本初の作品集」と帯に記されているように、その頃ホックニーはトップランナーのひとりだった。 



イエスタデイ・ワンス・モア    小林信彦  新潮社  19920420 16刷      

とにかくこの人の本が均一台にでていれば、必ず買います。 それにしてもこの本が16刷とは。 



ユリイカ  2007 5月号   特集ル・コルビュジェ  青土社 

今年5月に六本木ヒルズの森美術館で開催されたル・コルビュジェ展にタイミングを合わせた特集号。 

探してみたら、同じユリイカの1989年の「総特集ル・コルビュジェ」という臨時増刊も本棚にあった。

売れるんですねこの人の特集。 




柔らかい個人主義の誕生    山崎正和  中央公論社  19850405 13刷     

「柔らかい個人主義」というコトバ自体がとても魅力的で、個人主義というものの本質をわかりやすく説いて

くれた名著だけれど、結局彼が言っていた成熟した合理的(モダン)な消費社会というのは、けっきょくこの国

には訪れなかった。 今この社会にある消費は、ただ欲求を即座に満たすことだけを目的にした自己満足的な


もので、成熟とは正反対の野放図なアクションでしかないように思える。 

だからこそ「癒し」なんていうものが消費のキーワードになってしまうのだ。

*

さて最後に昨日、いつものTでの仕入れ。



曼荼羅イコノロジー   田中公明   平河出版社1  9901210 3刷    

ダナエ         藤原伊織   文藝春秋  20070115 初版  

地獄の読書録      小林信彦   集英社  19800925 初版   

東京装置        小林紀晴   幻冬舎  19980210 初版   

五条坂陶芸のまち今昔  田村喜子   新潮社  19880915 初版   

THE DAY 崩御から24時間の東京・全瞬間  編情報センター出版局  19890222 初版

Mac の知恵の実      牧野武文   毎日コミュニケーション  20000219 初版

活字のサーカス       椎名誠   岩波新書  19880325 10刷   

術語集         中村雄二郎   岩波新書  198801181 4刷   

Arne 1 2002-10-30/No.01    柳宗理さん、使いやすいキッチン道具をありがとう

Arne 3 2003-04-15/No.03    村上春樹さんのエッセイ「言いだしかねて」

Arne 5 2003-10-15/No.05    堀井和子さんにパンの作り方を教わりました 

Arne 7 2004-03-15/No.07    「古道具坂田」の坂田和實さんの美術館「as it is」

Arne 17  2006-09-15/No.17    松浦弥太郎さん COW BOOKS の移動古本屋仙台に行く


モダンな暮しの手帖といったおもむきの大橋歩編集「Arne」の大量(といっても10冊ですが)放出があった。 

予算の都合でそのうちの5冊しか買えなかったけれど、次ぎいったときに残っていたら必ず買おう。 


安い本ばかり買っていると時たまガツンとメインディッシュのような本が買いたくなってしまうんだけれど、

そんな時杉浦康平さんの装丁した本は、本棚で背表紙映えがして、ついつい買ってしまう。 

この「曼荼羅イコノロジー」もそういう本のひとつ、杉浦康平には曼荼羅がよく似合う。 


ダナエは、5月に亡くなった伊織さんの遺作短編集。  

当本棚の性格上、なかなかエンターテインメント小説の新刊は買いづらいというのが正直なところだから、

1月の新刊がこうやって古本として登場するのはちょっと嬉しい、さっそく読みふけりたい。

「名残り火」も早くでてこい。




単行本19 / 文庫・新書2 / 雑誌13  計34冊 



一見なんの脈絡もないブックリストだけれど、こうやってひととおりを眺めてみると、コトバノイエの本棚の

見事なまでの縮図であることにあらためて愕然とさせられる。 


でもプロになったからといって、そう簡単に好きな本が変わるわけないよね。