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2009.08.26

l'ete sans fin

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夕風に秋の気配を感じるようになると、少年のようにゆく夏を惜しんでみたくなる。

終わりない夏、なんて使い古されたフレーズを弄ぶほど身も心も若くはないけれど、
振り返れば浮かぶ、いくつかのシーン。

とある日、知己の新居のしつらいを手伝って、そのあとの銭湯の爽やかさ。
またとある日、小さな古書店の窓から眺めた夕立ちといなびかり。

思えば今年の夏は雨が多かった。

伊勢湾の小さな浜辺の茶屋のじいさんとばあさん、台風に荒れる海。
水鳥のように沖に浮かぶサーファーたち。

朝焼けの海、その遥か沖を行き来する満載の貨物船。
F3の望遠レンズ越しに見る無垢の微笑。

海は変わらない、ずっと。

ローターコースターの頂きから見える一瞬の遠景、のち震えるような急降下。

旅のエッセイを読みながらうたた寝する、郷里の縁側。
障子越しに、かすかに甲子園。

森のプールの水の中の静寂。

深夜、飼い猫を探して近所を廻り、ふりかえれば月、満天の星。
庭に咲くセージの真紅。

阪神高速池田線を走るSAABの窓から見る山の陰、シェリル・クロウの歌。

日蝕の360度のパノラマの夕焼け。
真夜中のベルリンの寡黙な青空。

うつろう風の色。

そんな光景のひとつひとつが、短い夏の記憶として、身体の中を流れ去っていく。

ガーシュインのこんなブルースを思い出した。

Summertime,
And the livin’ is easy
Fish are jumpin’
And the cotton is high

Oh, Your daddy’s rich
And your mamma’s good lookin’
So hush little baby
Don’t you cry

One of these mornings
You’re going to rise up singing
Then you’ll spread your wings
And you’ll take to the sky

Janis じゃなく、Ella で聴いてみたいな。

*

休日をはさむと変則日程で、リズムがうまくとれない。
時間があれば本買いにはいくが、なんとなく焦点が定まらない感じ。

車に乗ることが多かったので、CDをたくさん聴いた。
音楽を聴けば、音楽のことが気になって、音楽の本が集まってくる。

■ ジャニス ― ブルースに死す   デヴィッド・ドルトン   19731010 3刷

■ ボブ・ディラン  瞬間の轍  1960-1973   ポール・ウィリアムス   音楽之友社 19920310 第1刷

■ ブルースの歴史   ポール・オリバー   晶文社   19910215 9刷    4794951760

■ ROCK’N ROLL BABYLON  ゲーリー・ハーマン  白夜書房  19890210 初版第7刷    4893670921

ジャニス・ジョプリンは、ROCKそのもの。
” BABYLON ” は、ロック界のドラッグやセックスにまつわるスキャンダルの集成。
時節柄「のりピー」的な一冊といってもいいかもしれない。
オリバーのブルース史は、白人が書いたものとしてはもっとも優れた研究書だろう。

■ Nine Stories    J.D.Salinger  Bantam Books  1971 15th printing

■ Point Counter Point  Aldous Huxley   Penguin Books  1967 6th

■ WALDEN ; or Life in the Woods    H.D.Thoreau YOHAN Publication 1972

洋書ペーパーバックの均一棚に気がついて、3冊ピックアップ。
どれもそんなに難しくなさそうだから、できれば読んでみたいと、そのときは思う。
文庫本より少し縦長のサイズが、本棚に並んだ姿は、なんとなくイイ感じ。

” Nine Stories ” は、「バナナ・フィッシュ日和」が収められたサリンジャーの自選短編集。
シーモアの物語「グラスサーガ」はここから始まっている。

オルダス・ハクスリーは、シェリル・クロウの ” Run Baby Run ” という曲で、

She was born in November 1963
The day Aldous Huxley died
And her mama believed
That every man could be free
So her mama got high, high, high

と歌われているイギリスのLSD作家。
” Point Counter Point ” は、「恋愛対位法」と訳されている。

” WALDEN ” は、言わずと知れた「森の生活」。

3冊とも、ヒッピー系かな。

■ 現代の職人   石山修武   晶文社   19910810 3版

住宅に対する考え方がとてもラジカルな石川先生の職人取材、
これまたラジカルな編集長を擁する「室内」の連載から。
このひとの徹底した大量生産、大量消費への反骨は HIP的としかいいようがない。 

■ 一生競馬   河内洋   ミデアム出版  20030330 第1刷    4944001991

装幀も中身もごくあたりまえの騎手本だけれど、サインを見返しに見つけて、おもわずレジへ。
「牝馬の河内」(現調教師)は同い年なのだ。
この本を買ったら、彼の厩舎の馬が、大本命をまかして札幌記念を勝利した。
こういうときに馬券を買っていないのが口惜しい。

■ 女たちよ!男たちよ!子供たちよ!   伊丹十三   文藝春秋   19790801 第1刷

■ 東京島   桐野夏生  新潮社   20080525 初版

■ 打ちのめされるようなすごい本   米原万里   文藝春秋   20061130 第4刷

「読まず売れ」の買い直しが2冊と、「忘れダブり」が1冊。
どれも百均棚にいるような本ではないのだが。

*

” SPOT LIGHT ” で新しい企画 「select from selected(仮)」 が進行中、乞うご期待。

 

最近追加した「美しき日本の残像」のブックリスト。

http://kotobanoie.com/