小説が少ないのがコトバノイエの本棚のひとつの特徴ではないかと思う。
小説は面白すぎるのだ。
もちろんつまらない小説だっていっぱいあるし、アンチ・ロマンなんていうなかなか読み進めない小説もあったりするけれど、とにかく筋書きのある物語なんていうのは、面白そうなやつを選んで買ってきてるんだから、たいていの場合読み始めると止まらないからやっかいだ。
その止まらなさ加減の濃淡が、小説書きのひとつのモノサシであったりもする。
この前買った小説集は色川武大の「離婚」。
この人の本はコレクション・アイテムのひとつだからけっこう揃っていると思っていたんだけれど、ふとしたことで直木賞をもらったこの本がないことに気づき、なんとなくせかされるように買ってしまった。もちろん文庫本ではもっていて、何回となく読んでいるので、まだそのページはまったく開いてないが、78年初版なのにすごくきれいなその本は、「怪しい来客簿」や「ばれてもともと」や「引越貧乏」といったちょっと麻薬的なこの人の小説たちといっしょに、最初からそこに在ったような涼しい顔をして本棚におさまっている。
本棚にこの人の本がなかったらちょっと淋しいだろうな。
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□ 離婚 色川武大 文藝春秋 19781130 初版 0093-305140-7384 ¥750 (たぶん絶版)