やさぐれ競馬
Derby Day 2015
ダービーの日、京都競馬場にでかけた。
べつにそこでダービーが行われているわけじゃないけれど、なんとなくその日に競馬場にいて、陽光に映える鮮やかなターフを駆ける競走馬たちを眺めていたいと思ったのだ。
そしてその日のその競馬場の雰囲気を、映像作家シブヤくんに撮ってもらった。
レースに興じ、ダービーを巨大なモニターで観戦し、淀のターフをてくてく歩いた。
じつに長閑で、気持ちのいい5月最後の日曜日。
ダービーの日の競馬場。
居酒屋兆治のように無骨で侠気あふれる騎手だった柴田政人は、悲願だったダービーをウイニングチケットで制した後のインタビューで、「世界のホースマンに第60回の日本のダービーを勝った柴田ですと伝えたい。」という名言を残した。
たった3戦で第63回ダービーを制したフサイチコンコルドは、いまだに奇跡の馬といわれているし、このときクビ差で敗れたダンスインザダークの橋口弘次郎調教師は、2014年にワンアンドオンリーでダービーを制するまで、このレースのことをずっと悔やみ続けていた。
「ダービー馬のオーナーになるのは、一国の宰相になるよりも難しい」 と言ったのはチャーチルだが、競馬の世界は、5月の最終日曜日、東京競馬場に10万人以上の観客を集めて開催されるこのレースを中心に動いている。
日本ダービー、正式名は「東京優駿」。
一生に一度の、最高峰の栄誉をかけて疾駆する18頭の若駒。
チャンピオン・ディスタンスと呼ばれる12ハロン(2400m)の馬齢定量戦、本賞金2億円。
そして今年もまた、新たな伝説が残された。
4コーナーで逸走しながら、直線の一閃だけで皐月賞を制覇した狂気の駿馬ドゥラメンテは、そのレースから一変して王者の風格さえ感じさせる大人びたレース運びで楽々とレコードを記録し、クラシック3冠への切符を手に入れた。
単勝支持率43,7%の馬が勝利したわけだから、結果だけを見ると順当なものにみえるかもしれないが、このドゥラメンテがその強さと裏腹の狂気を秘めた馬であることはそれまでのレースを見れば明らかで、少しでも手綱を間違えば惨敗もあり得たはずだし、なによりもダービーを一番人気で勝つことの難しさとそのプレッシャーがどれだけのものかは、これまでそうして負けていったジョッキーや調教師たちがいちばんよく知っているはずだ。
そして、そのプレッシャーに打ち勝ったジョッキーはイタリアの名手ミルコ・デムーロ。
2003年に弱冠24歳で外国人騎手として日本ダービーを制覇している彼も、JRA所属騎手としては始めての栄冠で、インタビューでは「ホントニ、ユメミタイネ」と、その頬を上気させながら、鮮やかな日本語で応えていたのが印象的だった。
寺山修司がいうように、「競馬が人生の比喩なのではなく、人生が競馬の比喩なのだ」としたら、この2分30秒足らずのレースには、名誉や欲望や美や憧憬や絶望や希望、そして友情や愛といった、人生のさまざまが凝縮されているようにさえ思える。
また次のダービーを観るために、来年まで生きていたいと思う。
5月31日 東京10R 第82回 東京優駿 2400m芝・外
1着 ドゥラメンテ / M.デムーロ 2:23.2(レコード)
2着 サトノラーゼン / 岩田康誠
3着 サトノクラウン / C.ルメール
払戻金
単勝 14 190円 1番人気
複勝 14 130円 1番人気
1 310円 4番人気
11 210円 3番人気
枠連 1-7 580円 3番人気
馬連 1-14 1,980円 5番人気
馬単 14-1 2,220円 5番人気
3連複 1-11-14 3,950円 9番人気
3連単 14-1-11 15,760円 36番人気
a film by takeshibuya
photos by Hirohisa Kato