おかしな話だけれど、自分の書いたものに触発されてしまうということが、たまにある。
この前にエントリーした「少し大きな本」の余韻がどこかにまだ残っていたようで、写真集を買ってしまった。
「Screen Tests / Portraits / Nudes 1964-1996」 by Gerard Malanga
NYCの地下鉄68丁目の駅でシャープにキメているパティ・スミスのポートレイトに惹かれておもわず衝動買いしてしまったモノクロームの写真集だけれど、解説を読んでみると、このマランガという人、なんとあのウォーホールのアトリエ ” the factory ” のメイン・フォトグラファーで、ニューヨーク・タイムズによれば、” Andy Warhol’s most important associates(右腕) ” だったそうだ。
そう、60年代後半から70年代初めにかけてのポップ・アート華やかなりしころの NEW YORK CITY !
” Screen Tests ” は、ウォーホールの ” the factory ” を訪れた人々を、モノクロで撮ったポートレート映画のプロジェクト。 このサイレント・ムーヴィーで、1秒間に16フレームというゆっくりとした速度のBOLEXを回していたのが彼だ。
圧巻は ” Portraits ” で、アンディ・ウォーホールはもちろん、アビー・ホフマン、ロバート・メイプルソープ、アレン・ギンズバーグ、ジャスパー・ジョーンズ、ジョン・ケージやテネシー・ウィリアムスといった当時のニューヨークのHIPなセレブリティたちの、ほんとうにリラックスした姿が残されていて、このブロンクス生まれの若いアーティストが彼らに愛されていたことがよくわかる。
写真というメディアの大きな特性のひとつは、静止した時間の中で、そのディティールが克明に記録されるということだけれど、ちょっと平凡な印象の ” Nudes ” も含めてこの写真集を眺めていると、真を写すっていうことの楽しさ、そして怖さをおもい知らされる。
それにしても28才の彼が、25才のメイプルソープやパティ・スミスを撮っていた1971年のニューヨーク、みんなこんなに若かったんだ。
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「Twelve」 by Patti Smith
パティ・スミスは生き残ったアーティストだ。
パンクの時代を疾走し、打ちのめされ、そして劇的な復活(Gone Again)。
1967年、21才の誕生日に、メイプルソープ(彼女のファーストアルバム ” Horses ” のアルバムジャケットの写真を撮ったのはこの人だった)からプレゼントされたという山羊の革のタンバリンをジャケットにしたこのアルバムは、彼女の「ロック」へのオマージュに相違なく、ジミ・ヘンドリクス、二―ル・ヤング、ボブ・ディラン、ドアーズといったアーティストやその楽曲のセレクションは、使い捨ての商品としてではなく、同時代を生き残った人だけに語れる ” narrative(物語) ” に満ちている。
60才のロッカーが造った魂のアルバム 「Twelve」 は、間違いなく2007年のベスト・アルバムのひとつだと思う。
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□ Screen tests / Portraits / nudes Gerard Malanga Steidl 2000 ¥2,800 ORDER from here
□ ポッピズム アンディ・ウォーホール リブロポート 19920405 初版 ¥3,000 ORDER from here
□ ぼくの哲学 アンディ・ウォーホール 新潮社 19980830 初版 ¥1,800 ORDER from here
□ Twelve (CD) Patti Smith COLUMBIA 2007 ¥1,500 ORDER from here
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