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spot light の30選、出版社ごとに選んでやろうと目論んで、真っ先にうかんだのが晶文社。 そう思って犀のマークがついた本を集めたら、107冊が本棚にあった。 まずパッとすぐに思い浮かぶのが、植草甚一、そして片岡義男。 もちろん他にもいろいろなシリーズの本があって、ソンタグや小林信彦やブローティガンと いった人たちの本もそれぞれに魅力的だけれど、60年代のカウンターカルチャーの流れを くむ、雑誌「Wonderland → 宝島」や、このふたりの一連の著作は、あまりにも刺激的だった。 それ風に言えば、「ぼくたちには晶文社が必要だったんだ。」っていう感じだろうか。 そして、そういったポップな文化の流れはそのまま、1976年創刊の「POPEYE」まで続き、 晶文社の本は、その水先案内人として、多くの人を惹きつけたのだった。 それは一言でいうと「サブカルチャーの発見」ということじゃなかったのかと、今にして思う。 既成の価値観(エスタブリッシュメント)から離れても、自分なりのスタイルさえあれば OK なんだという、いわば傍流の存在感を積極的に肯定した、「サブ」というコンセプト。 今でも本屋で、あの犀のマークを見ると、おもわず手にとってしまうのは、そのときの熱が 今も微かに残っているからじゃないだろうか。 本そのものでいうと、平野甲賀さんによる一連のブック・デザインがいちばんの特徴だが、 もっとも晶文社的なのは、何冊かピックアップした「ヴァラエティブック」というスタイルだろう。 A5の判型に、一段二段三段四段が入り混ざった版組みに、コラムやエッセイ、評論などが 渾然一体となって収められている雑文集、それは1ページ目から順に最後まで進むという ルールにまったくとらわれない、まるで雑誌のような本だった。 本の内容だけではなく、本のスタイルを創るという、今でいうブランディングの手法を採った その編集は、この出版社、この編集スタッフでしかできなかったことじゃないかと思う。 小林信彦は、そのヴァラエティブックの白眉といわれる「東京のロビンソン・クルーソー」の あとがきで次のように書いている。 「編集とデザインが一体になったこの本は、津野海太郎、平野甲賀両氏によってつくられた。 私には、まだできあがった形がわからないのだが、どんなものになるか、たのしみでもある。 校正刷りをみているうちに、頭が痛くなり、目がチカチカした。私もまた、われながら<シャレ がキツい>と思わざるをえないのである。」 his master's choice - BOOKS+コトバノイエの店主がセレクトした、晶文社の30冊です。 September 17, 2009 BOOKS+コトバノイエ 店主敬白 P.S. いつも行く本屋で昨日見かけた「ぼくは散歩と雑学がすき」は、なんか少し大きいなと思ったら、 最近復刊された新装版だった。そして、この文章を書くために立ち寄ったいくつかのウェブサイト で知ったのは、晶文社が文芸部門を廃止したという、いささかショッキングなニュースだった。 あの犀のマークの本が、ブックショップからなくなる日が来る。 50年という時間が、出版社にとって長いのか短いのかはよくわからないし、どんなものにも 栄枯盛衰があることはよくわかっているけれど、ひとつ素晴らしい出版社が表舞台から去って いくのは、感慨深いし、やはりちょっと淋しい。 All things must pass All things must pass away None of lifes strings can last So, I must be on my way And face another day ( "All Things Must Pass" by Gerge Harrison 1977) |
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注 : 本は選者や編集者の意図を含まずストックナンバーの順に掲載しています。
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